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『現場百回』に思うこの年の瀬
ブログ2018.12.31
この秋に放送された人気ドラマ『リーガルV』。主演の米倉涼子さんがお気に入りのドラマ『現場百回』は、鎧塚刑事が事件を捜査する上で最も大切にしていることとして、リーガルVのドラマで毎回登場しました。
現場百回の意味は”思い込みや既定の概念を捨て、手がかりとなる遺留品の見落としはないか、目撃者は他にいないか等、どんな些細なことからでも証拠を発見するため100回現場に足を運べ”ということのようです。
このリーガルVを私は家内と毎週楽しみにしていましたが『私の仕事と同じだな・・』と思いながら見ていました。事件の捜査と法廷と私の治療、何が同じなのかというと『本当の正体を見抜くこと』です。
~思い込み~ 治療は常に初心で、と思い患者さんと接しておりますが、思った治療効果が出ない場合その原因をよくよく考えてみると、自分の思い込みが原因で見立てを誤っていたことに気が付くことがあります。
~聞き込み~ 痛くなった原因や状況その後の経過を十分に聞かなかったり、聞き漏れがあったり、患者さん自身も忘れていることもあり、施術の判断材料が不足していたため結果が思うようにいかないことがあります。
~遺留品の捜査~ この辺が痛い、と患者さんに言われて言われた通りこの辺だけと理解し、理解したつもりでしっかりと触診をしないで施術をし、思った効果が出ないため改めてしつこく触診してみると、この辺だけではなく新たに痛い箇所を見つけることがあります。
先月こんなことがありました。
77歳女性、10年前から腰が痛くどこの医者に行っても治らず、痛いと我慢出来ずに座薬を使う、と訴えるYさんが鍼治療を希望されて紹介で来院されました。背中から腰は大きく丸くなっており、患っていた期間の長さが見て窺えました。
年齢、患っていた期間、痛みの程度から考えて簡単には治らないだろうし、どれくらいの結果を出せるだろうか、そんなことを考えながら治療を始めました。
2回目の来院時「前回の後どんな経過でしたか」の私からの質問に、Yさんは「少しはいい気がするけど昨日は座薬を飲んだ」と晴れない顔。3回目の来院時も晴れない顔で「座薬を飲んだ」と。
私の心も晴れず少し考えて3回目の治療では、前回以上にしっかりと腰の触診をしてみました。「Yさん、ここは?ここは?・・・」に、Yさん「センセーそこやっ」「そこもやっ」。場所はツボでいうと志室、筋肉は腰方形筋。1回目、2回目はここに上から2寸(約6センチ)の鍼をしました。今回はここに3寸(約9センチ)の鍼を横からしました。
4回目の来院時、Yさんの開口一番「センセー、今週は座薬飲まんかったよ」と嬉しそうにニンマリ。やった、私もニンマリ返し。
これは「治療に時間がかかるだろうし、効果が出ずらい」という私の思い込みで、治療箇所がしっかりと的を得ていなかったことが原因で結果が思わしくなかった症例です。しかしYさんが3回目の施術のチャンスを私に下さったので、幸い二人でニンマリすることが出来ました。
治療効果が思わしくない理由は色々あり、検証出来る例と出来ない例もありすべての症例が私自身の満足のいく結果が得られるわけではありません。しかし思い込みを排除しどんな些細なことであっても心に留めて常に初心で真摯に向き合うこと、これを再考させられた『現場百回』とYさんの症例でした。
そして先日今年最後のYさんの施術がありました。施術中Yさんが「センセー、6年前ココが出来た時に来てたら私の背中こんなに曲がらんで済んだと思うんや」とポツリ。「そうですね、これからこの背中を少しずつ伸ばしていきますよ!」。